ディスキディア育て方
SecA
SecC
SecD
低地種
山岳種
スマホは横向きにしたほうが見やすいかもしれません
ディスキディア
●着生植物:ディスキディアは主に熱帯地方の着生植物で高い空中湿度を好みますが、その反面根の過湿を嫌います。
●アリ植物:ディスキディアのほとんどは樹上アリの巣に根を張ってアリの排泄物等を養分としているアリ植物です。根からも多くの養分を吸収します。もちろんアリがいなくても育てられます。
ディスキディアの分類
●ディスキディアは低地種と山岳種に分けられます。低地種は丈夫ですが山岳種は高温に弱く育てにくいです。
●一般的に売られているディスキディアのほとんどは低地種です。
●また、葉の形から下記の3タイプに分けられます(当サイトではSecA, SecC, SecD と表示します)。
【セクションAscidiophora】SecA
●アリ壺(ピッチャー)タイプの葉を持つディスキディア
●D. majorなど
●アリ恐怖度★★★
・美味しそうな南国フルーツにも見えますが、中にアリが住んでいます。
【セクションConchophyllum】SecC
●コンベックスタイプ(凸状)の葉を持つディスキディア
●D. imbricataなど
●アリ恐怖度★★
・葉の裏にアリが潜んでいます。根にアリの巣があります。
【セクションDischidia】SecD
●普通の葉のみを持つディスキディア
●D. bengalensisなど
●アリ恐怖度★
・根にアリの巣があります。
■育て方/栽培/ケア■
●自生地:主に熱帯アジア
●ペットには毒との記述もあります。
●肌の弱い人は白い樹液でかぶれる可能性があります。
●低地種:丈夫な種が多いです。
●山岳種:育てにくい、レア種が多く栽培情報も少ない。
●一般種は低地種で、根の過湿を避けて冬場に暖かい所においておけば栽培は容易です。
●暖かい時期
※基本的に花は小さく地味です。
●低地種:流通しているディスキディアの多くは熱帯地方の低地種で低温には弱く暑さには強いものが多い。7℃以上、できれば10℃以上が良い。
●山岳種:高温に弱い。
●日光を好み耐陰性は弱い。自生地ではかなり直射日光のあたる所に自生している種もある(直射日光に当てる場合は念の為少しづつ慣らした方が良いかも)。夏の直射日光は避けた方が良いかも。
●空中湿度は高い方が良い、エアコンに注意。
●着生植物の為、根の過湿はよくない。
●着生植物の為、空気の流れがあった方が良い。
●培地:水はけのよい物。
・観葉植物用の土では土壌湿度が高くなりすぎる。
●肥料:そんなには必要ないらしい(が他の着生植物よりは貧栄養に弱いかも)。
「根は着生する役割が強く養分/水分を吸収する能力は弱い」との記述もありますが本当でしょうか?
ディスキディアの根は多くはアリの巣内にあり、そこから養分/水分を吸収しています。普通の着生植物と違い、根からの養分/水分吸収の依存度が高いと思われます。
●個人的なやり方ですが、ベンガレンシスのようなSecDタイプは植替えをせず、カットして挿し木しています。
●カット後、元の鉢の株からも新芽が伸びてきますが、2年ぐらいすると土の状態が悪くなって元の鉢の株は成長が弱くなってきます。そうなったら全ての株をカットして土の入った鉢の方は捨ててしまっています。
●多くの種は挿し木で簡単に増える。
●種には細かい毛が生え風に飛ばされる、室内では掃除が面倒な事も。種子は蟻が好む匂いを発している可能性があります。
●気根が黒ずんできたり新芽がしおれ始めたら水分を吸収できていない(水不足/根腐れ)。
マレー半島のディスキディア
※R.E. Rintzの論文(引用元は最下段Citation1)を参照、以下のカッコ内は個人的な感想。
(マレー半島以外の種もある程度同様の傾向があると思われます。)
●明るい地域で豊富:海岸/川岸沿い, 尾根, 石灰岩の丘, 高山の樹木や竹, 果樹園, 公園の樹木など。(低光量では育ち難い?かなり直射日光のあたる所に生息している?石灰岩の丘でも育つのでアルカリ土壌でも大丈夫?蟻に周りの環境を酸性にしてもらい適応しているだけでアルカリ土壌は苦手?根を地面に下ろさない種は土壌のpHは無関係?)
●低地の森林では地上1~10mで最も豊富に発生する。
●雲に覆われることが多い山林では多くの場合地上30m以上に多く発生する(太陽光獲得競争の結果だと思われます、薄暗い雲霧林の地表付近では成長できない = 極端な低光量には弱いと思われます)。
●山岳種は採集して移動させると開花をやめ、あまり成長せず、6~8か月後に枯れる。(山岳種の育成は難しいようです。高地性蘭のように夜間のクールダウンが重要?)
●山岳種の葉は日光にさらされると真っ赤になる。(光量調整の目安になりますね、低地種でもある程度同様の傾向がある様です。)
【低地種】1000m以下
Dischidia albiflora
Dischidia acutifolia
Dischidia bengalensis ※標高1700m位まで分布
Dischidia cochleata
Dischidia complex
Dischidia fruticulosa
Dischidia hirsuta
Dischidia imbricata
Dischidia major
Dischidia nummularia
Dischidia punctata
Dischidia singaporensis (=Dischidia majorのシノニムとする事もある)
Dischidia superba
Dischidia tomentella
【山岳種】1000m以上
Dischidia albida ※低地, 特に石灰岩の丘にも分布
Dischidia astephana
Dischidia dolichantha
Dischidia longepedunculala
Dischidia parvifolia
Dischidia rhodantha
Dischidia scortechinii
Dischidia subulata
Dischidia vadosa
【熱帯の雲霧林】(画像はグーグル、マレー半島ではありません)
●右半分の大きな木の樹上にある黒い塊はみんな着生植物です(恐らくはチランジアです)。
●霧深い森林では太陽光獲得のために着生植物は樹上の高い所に多く発生するものと思われます。
●着生とは「太陽光獲得競争の手段」です。着生植物がジャングルの薄暗い木漏れ日の中で成長しているとは限りません。
【半水耕栽培?】
●写真はベンガレンシス バリエガータ(variegata)という班入りの品種です。
●プラスチック鉢の底に靴紐を通し、その靴紐を水槽に垂らしています。
●毛細管現象を利用して水分が少しづつ鉢内へ供給される事を狙いましたが、この靴紐を伝って根が伸び水中に広がっていきました。
●地生植物では鉢の下から根がはみ出て来てもこの様にはならないと思いますが、着生植物のディスキディアの根は靴紐を伝ってどんどん下に伸びていき、水を探り当てると四方に根を展開していきました。面白いですね。
●ハンギングだと余り気根が伸びませんがコルクボード/バークや水に接触させると結構根が伸びます。
注意:この方法だと想像以上に鉢に水分が供給され過湿になってしまいます。
●ディスキディアはあまり根が張らないといった記事も見受けられますが、それは培地が適切ではないからではないでしょうか?
●ディスキディアは自生地では樹上アリの巣に根を張りますが、ディスキディアが根を張らないアリの巣はもろく崩れやすいそうです。この事はディスキディアがアリの巣にがっちりと根を張っていることを意味します。
●Citation2はChristian Peeters の論文のD. majorの根の画像です。
注: ピッチャー内の根, 株の根元の根ではありませんが参考までに。
●がっちりと根を張っているのが分かります。また、アリの巣ですので空洞が多く根が空気に触れやすい環境です。
【AG: Ant gardens】.
アリ植物
●カンガルーポケットを含め多くのディスキディアは樹上アリと共生するアリ植物(Myrmecophyte)です。虫嫌いの方は念の為御注意(育てていても特に蟻が集まってくる印象はないですが…)。
●Dischidia hirsuta 等は自生地でもあまりアリとの共生が見られないらしいですが、カンガルーポケットのようなポケットがないディスキディアも基本的にアリ植物と考えた方がよさそうです。
●但し、品種ごとに特定のアリと共生する為、日本の蟻もディスキディアに集まってくるのかは不明です。
根拠不十分の考察
● 多くのディスキディアは根から養分を吸収します。
「着生植物なので根からではなく葉から養分を吸収する」との説明も見受けられますが、多くのディスキディアはドマチアやアリの巣に根を張る事によりアリから養分を得ています(myrmecotrophy と言うそうです)。
その為、通常の着生植物より貧栄養には弱い可能性があります。
●ディスキディアは自生地ではアリによってアブラムシなどの害虫から守られています。栽培下でのアリのいない環境では害虫に弱い可能性があります(室内栽培している範囲では害虫に弱い印象はないですが)。
●蟻の巣はpHが酸性になるようです。アルカリ土壌には弱いかもしれません。
アリ対策.
●鉢の周りにチョークで線を引き結界?を作るとアリが入ってこないそうです(確かめてませんがかなり効果があるようです)。
●アリ植物専門の農園もあるようです。
【アリ植物の専門用語】
●エライオソーム (Elaiosome)
多くのディスキディアでは種子にエライオソームと呼ばれる栄養体が付いていてアリを誘引する。エライオソームが日本のアリを誘引するかは不明(日本のアリは誘引されない事を願ってます)。
●ドマチア(Domatia)
・カンガルーポケットの”ポケット”の事をドマチア(Domatia)またミルメコドマチア(myrmecodomatia)と言います。
・外的要因等により植物にできた”こぶ”等と違って植物自身によって生成された虫などを収容する所をdomatia(単数形はdomatium)と呼び、その中でアリ専用のドマチアがmyrmecodomatiaになります。
D. vidalii(カンガルーポケット)のmyrmecodomatia、貯水嚢ではありません。
●ミルメコセニック植物(Myrmecoxenic plants)
アリに住居と食料の両方を提供する植物
●ミルメコドミック(myrmecodomic)アリの住居
●ミルメコトロフィー(myrmecotrophy)
アリによる宿主植物への栄養供給
【アリとの共生方法】
●共生1: 凸状の葉のドマチア
セクションConchophyllum
・アリにとってはその下のスペースが日傘の様な隠れ家になる。
・ディスキディアはそこにある根からアリの排泄物などの養分を吸収する。
●共生2: 壺状の葉のドマチア
セクションAscidiophora
・葉の内部はアリの住みかとなる。
・ディスキディアは葉内の根から養分を吸収する。
・このタイプのディスキディアは下記の数種しか知られていない。
・Dischidia complex
・Dischidia Major
・Dischidia vidalii
・Dischidia saccata?
●共生3: 樹上アリの巣に根を張る
エライオソームに誘引されたアリ(Citation3)が種子を樹上の巣に運び、そこで発芽成長する(Citation4)。
・張り巡らされた根により巣は崩れにくくなる(上段の【半水耕栽培?】欄のCitation2)。
・根は巣から養分を吸収する。
※着生植物ではあるが根から多くの養分を吸収している。また、アリの巣は樹上にあり内部に空洞もある為、過湿土壌での栽培には不向き。
●共生4: その他
・アリは植物に集まってくるアブラムシなどの害虫を食べ、植物は害虫から守られる。
・ディスキディアはアリが排出する二酸化炭素を吸収してアリの呼吸の恩恵を受けているともいわれている。
●引用
・Citation1:R.E. Rintz(1980)[The Peninsular Malayan species of Dischidia (Asclepiadaceae)]Blumea: Biodiversity, Evolution and Biogeography of Plants , Volume 26 – Issue 1 p. 81- 126
・Citation2:Christian Peeters, DeCha WiWatWitaya(2014)[Philidris ants living inside Dischidia epiphytes from Thailand]ASIAN MYRMECOLOGY Volume 6, P.57
・Citation3~4:Eva Kaufmann(2002)[Southeast Asian ant-gardens : diversity, ecology, ecosystematic significance, and evolution of mutualistic ant-epiphyte associations]Universitätsbibliothek Johann Christian Senckenberg P.35
●画像ID: ①著作者②作品名③ライセンス形態④備考⑤URL
・Fig18:①charliev②Dischidia rafflesiana③CC-BY-NC④翻案⑤https://www.inaturalist.org/observations/19671118
・Fig21:①Mokkie②Dischidia pectinoides③CC BY-SA 3.0④SA,翻案⑤https://en.wikipedia.org/wiki/Dischidia_vidalii
・Fig54:①samuel_lee②Dischidia imbricata③CC-BY④翻案⑤https://www.inaturalist.org/observations/144820654
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